ゾンビ・ストリッパーズ

あらすじ:ジョージ・ブッシュ政権の4度の続投によって、他国に戦争を吹っかける事で自国の支持率を維持することにやっきになったアメリカ国家。度重なる戦争によって兵士の数が激減した事を危惧した軍は、死体を蘇らせるウィルスを開発する。ゾンビ映画お決まりに、ウイルスは漏洩し。なんだかんだでストリッパーに感染する。ゾンビ化したストリッパーの過激で挑発的なポールダンスは観客を虜にしていく。


感想:
『21世紀の死霊の盆踊り(ポールダンス)!!』(褒め言葉として)
最初に世界観の説明として、ブッシュ政権への批判から始まる。(2008年製作の映画)
ゾンビに蠢く研究所を見ながらウイルスを開発した博士が言う「見よ、青ざめた馬を・・・・・・」(超クール)
開発したウィルスに汚染されゾンビだらけになった研究所にゾンビ掃討を目的に特殊部隊Z分隊が現れることから始まる。
ナイフ使いや軍隊独特の復唱を繰り返す女兵士と過度にキャラクターをデフォルメされた特殊部隊VSゾンビの戦いから始まるので、「ストリッパー要素ってなんだよ!」と憤りを感じるかもしれんが。まぁ、ズボンを穿いてちょっと待て。
ゾンビに噛まれた隊員自分の身を案じ研究所を抜け出し近くにあったストリップ劇場へと逃げ込む。

ストリップ劇場では、スターダンサーのキャットを筆頭に、キャットに嫉妬心を燃やすジェニー。ゴス系のリリス。高慢なソックス。強欲な支配人イアンにDJと掃除人。と個性派の集まり。そこに祖母の人工肛門の費用を稼ぐ為に農場から出てきたジェシーが加わる。
ここからはおっぱいまみれだ。おっぱいしかない。「ゾンビどこー」って気持ちになるくらいゾンビだ。
ゾンビと化した隊員のカミツキによってゾンビ化してしまうキャット。
舞台に舞い戻ったキャットのポールダンスは人並みはずれた動きで見る者を魅了し大盛況。
そして観客達は、ゾンビのポールダンスでしか満足でない身体になっていく。
観客に野次られ、不要扱いされる他のダンサー達は進んでゾンビ化を始め、腹すかせたゾンビストリッパー達の牙は観客へと向けられる。

ホラーコメディなんだけど、台詞回しが妙にクールでゾンビ化したストリッパーがニーチェ全集を読んで「今なら、虚無主義とか超理解できる」とか言ったり。最初に博士が「青ざめた馬・・・」と呟いたり、人間だということを証明する為に話を語ったりするシーンが活かしている。
女同士の権力争いにゾンビというエッセンスを入れる事や、目の前で死人が踊る事に興奮する危機感を失った観客達を、冒頭のブッシュ政権の横暴を見逃し戦争という過激なモノだけを見続ける国民とダブらせている点なんか凄いクール。
マジカッコいい映画。
「ゾンビ+ストリッパー」といえば、『巨乳ドラゴン』を思い出すが。あっちはエロとコメディ要素に過激な暴力に溢れていたが。ゾンビストリッパーズは過激な暴力を少なめにして人間の中にゾンビという存在が現れた時の社会構造の変化を実験的に書いている。近年のロメロ作品に通じるものがある気がした。
暴力的なシーンは少なくてもグロシーンはちゃんと描いているのが実にアメリカ映画らしい。