THE WAVE ウェイヴ

あらすじ:ドイツのとある学校のとあるクラスで『独裁制』を教えることになった教師ベンガー。学ぶ気の無い生徒達にベンガーは一週間だけクラスに独裁制を敷いてみて、独裁制を体験してもらおうと考える。授業中だけの擬似的な独裁制は日を増すごとに授業外へと伝播していく。

感想:
日本ではオウムの事件以来『洗脳』と言う言葉だけが危険視され、「あいつは洗脳されている」「俺は洗脳されない」「洗脳されない為に日々気をつける事は?」なんて簡単に台詞として日常に溢れている。
しかし、人は皆生きている限り外部からの刺激を受け続け、自分の欲する思考へと変化していく。
洗脳されていない人間なんていないのだと思う。


この映画は1969年のカリフォルニアの高校で起こった出来事が下地になっている。元になった出来事は映画とほぼ同じ。「第二次世界大戦のドイツでナチスに国民が反旗を翻さなかったのは何故か」という教師の問いの答えを出す為に、クラスに教師をトップに据えた独裁制を取り入れてみたら、クラス内での団結は増し成績は上がりいい事尽くめで、ヤッタゼ!と教師が有頂天になったら、生徒達は教師に新しい規律を求め始めクラスだけ授業中だけの限定的な組織だったはずがクラス外にまで飛び火し、生徒達は組織に属さない生徒を見下し優越感を得たり疎外したりし始め暴走する。教師はこのままではいけないと生徒達を集め、生徒達にヒトラーの映像を見せて「お前達のやっている事はコレと同じだ」と伝える。
映画ではドイツの学生生活が、日本の高校生と比べてると随分自由(アメリカぽい)なので、序盤の彼らの言葉に日本人が共感する事はあまりないと思うが、彼らがベンガーの言葉に従い始め『WAVE』という集団が出来上がっていく授業風景は、日本の教育現場の目指しているモノに近づいていくようで実に怖かった。WAVEのマークを決めてステッカーを作り始めたりHP製作を始めたりするシーンでは、どっかの高校の文化祭で出し物を決めているようなノリであったし。
暴走を始めたWAVEは悲劇によって幕を下ろすが。この映画の伝えようとしている内容は実に奥深いモノで、「洗脳」というオモテ表示のモノよりも、人種を超えた全ての人間が内包している「支配欲求」と「従属欲求」の二つの魔力は如何なる倫理も歴史的背景も捨て去ってしまう恐ろしいモノだと教えていた。

不満点は、一週間をテーマにしているから仕方ないけど、さすがに生徒達の加速具合は無理がある気がした。高速で話が進みすぎて物語に重みがない。

THE WAVE ウェイヴ [DVD]

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余談。
中学時代に「全生徒の足並みが揃わないと行進が終わらない」という苦行を体育教師に食らった記憶を思い出した。

「民主的な学校なんて存在しない。
教科書もテーマもお仕着せで助け合いを知らず、学ぶ事もない。
人から与えられたカリキュラムに従うだけだ。
他人にコントロールされているんだよ」
『THE WAVE』原作者インタビューより。