不安の種

あらすじ:不思議な事が多発する地方都市「富沼市」を舞台に、そこに引っ越してきた一つの家族。そこに住む一組のカップル。越してきた一人の青年。他人同士の彼らが不思議な体験を通して繋がり合っていく。


感想:
原作はチャンピオン・チャンピオンREDで連載していた中山昌亮のオムニバスホラー漫画「不安の種」。原作のホラー漫画は一話完結の短い話が多く、日常に潜む不条理で不可解なクリーチャーに遭遇した人間の恐怖を描いている。日本ホラーはクリーチャーとの出会いからクリーチャー誕生までの因果を描くことが多いが、この漫画ではクリーチャーの名前や由来、存在理由が解き明かされる事は無く天災のように降って湧いた恐怖体験にただただ怯える人間を描いている。ゆえに、読者はその恐怖のターゲットが明日の自分、読み終えた自分になるのではないかという恐怖に駆られる為、人気を博している。
簡単に言うと、小さい頃に暗闇を意味も無く怖がったりする原体験を恐ろしい怪物として表現した作品。
そんで、そんなホラー漫画が映画化されたので、映画館に乗り込みたかったが。田舎の映画館では上映されなかったのでDVDを待っていたらすっかり忘れて先日思い出して借りた。

出だしから、ヘンテコな童歌と共に地面をナメクジのように這う視神経の付いた目玉を車が踏み潰していくシーンから始まる。
その後、半身が生垣に埋まった男(誠二)と救出しようとする男(巧)の出会いから誠二の回想で物語が始まっていく。(ここで効果音のデカさとクソみたいに拙いCGに嫌な予感がしていた)
物語が始まっていく。と言っても、彼らをテーマにしたショートストーリーが時系列をバラバラにして流れるだけ。
視聴者は観ていくうちに、いろいろ理解していくのだが。漫画好きの人は「あぁーこうゆう奴出てきた」と漫画に登場したクリーチャーの動く姿に懐かしさや驚きを楽しめるモノの漫画を知らない人だとたぶん苦痛だったんじゃないかと・・・。ホラーと言うよりもちょっとシュールすぎる話も多かったし・・・。マネキン女の優しいハンマー攻撃とか市の合併とか急にキレる女とか。
それでも、最後まで見ると、物語としてはちゃんとオチを付けているし漫画のショートストーリーを上手い事一本の映画として纏めているシナリオのセンスは良かった。安い効果音とCGをどうにかしてくれたらもっと嬉しかったがまぁ低予算が見て取れるので我慢。
原作の味をもっと出すには映像化する際に、映画ではなく深夜ドラマとして作ってくれれば原作の風味を損なうことなく出来たのではないかと思う。(そうなると、現在放送しているシンドラや放送禁止、トリハダと被ってしまうが・・・。監督同じだけど)

ナタリーのインタビューによると、「突如襲われる恐怖」ってのは不安の種に登場するクリーチャーとの遭遇なんて非現実的なモノだけはなく、突然の自分の死や身内の不幸といった不安が存在する。人間とはそういった突然襲い掛かる不安(恐怖)とどう向き合って生きていくかが映画のテーマになっているらしい。(富沼市を恐れ続けて家に篭りタイミングを見て逃げた巧の末路と、きょうこからの死の予言を受けてもきょうこと共に富沼市で暮らす覚悟を決めた誠二が監督の「不安と向き合って生きていく」というテーマを表しているのだろう)

漫画を読んだ上でレンタルDVDとして観るなら悪くない映画だった。


余談1.
ループオチだと納得できない点があるから、2つの世界があるんだろうなぁ・・・。

余談2.
岩井志麻子さんは声からマネキン女役だったのだろうけど、顔があんなんじゃ誰でも良かったような・・・。

余談3.
子役の演技がイイ!

余談4.
監督が作詞したあの童歌はなかなか聞き応えがある。
主題歌のノリノリの曲は好き。

不安の種 [DVD]

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