ダイバージェント

あらすじ:戦争によって多くを失ったが唯一被害を受けなかった近未来のシカゴが舞台。そこでは住民は自らの適性を機械によって診断され、5種類の派閥に分かれて暮らしていた。主人公ベアトリスも自らが務める派閥を決める歳になり適正診断を受けるのが。機械からの返答はどこの派閥適正も持たない「異端者(ダイバージェント)」だと認定されてしまう。行く先を見失ったベアトリスは自らの意思で見出そうと動き出す。それと同じくある派閥が暗躍を始める・・・。
↓予告

感想:
試写会に当選したので一足先に観賞してきた。


「公立高校出身の両親の薦めでなんとなく公立高校を目指していたベアトリスちゃんは、両親の淡白な生活スタイルにゲンナリし町中を奇声をあげて暴走するDQN高校の生徒に密かに憧れを抱いていた。両親に内緒でDQN高校に入学し見事DQN高校生になったベアトリスちゃん。DQN高校の寮に入りDQN高校生として自由な生き方が出来ると思っていたらDQN高校は体育会系の競争社会だった。嫌味な体育教師はムカつくけど、副担任のフォー先生は口は厳しいけどいろいろ教えてくれて大好き。こうなったらフォー先生の為に私頑張っちゃう!って、うちの学校に隣の秀才高校の奴らが出入りしているんですけど・・・」

って感じの話が2時間20分の大半を占めている。
予告編を見た印象だと「管理社会からイレギュラー認定を受けた主人公が社会を統治している奴らに追われ、イレギュラーや管理社会を良しと思わない連中が集まったレジスタンスに所属し管理社会の真相を暴く話」だと思っていた。リベリオンみたいなよくあるSF映画の王道的な奴。
が、実際に観に行ってみるとそうゆう要素もあるけど予告編で伝えている部分は終盤の20分くらいで1時間は友情と訓練パートに分かれていて、その世界の謎も小出しにいろいろ紹介されるが結局昇華できないまま終わった。実に巧妙な嘘予告編だったので予告編製作会社には天才的な嘘つきかMAD製作者が潜んでいる可能が高い。

あらすじで「住民は5つの派閥に所属していた」と書いたが「アレは嘘だ」(コマンドー
本当は5つの派閥+無派閥の6つだ。そして映画的には、主人公の両親が所属する『無欲を司る「アブネゲーション」』と主人公の所属する『勇敢を司る「ドーントレス」』と兄貴が所属する『博学を司る「エリュアダイト」』の三つが主要な派閥で、残りの『平和を司る「アミティ」』と『高潔を司る「キャンダー」』と無派閥の三つは存在するが物語に絡まないのでいてもいなくてもどーでもいい奴らの集まりになっている。実に勿体無い。*1
予告編で「人の人生はたった一回の性格診断で決められた」と言っているがアレも嘘だ(コマンドー
性格診断によって適性が割り出されるが、別に強制ではなかった。適性を知った後に選択の儀式で自ら選べるので結局は自分の望む派閥を選ぶことが出来る。本人の自主性を重んじているのかもしれんが、結局本人が好きな派閥を選べるというのはちょっと非効率のような気がする。
予告編でかっこよく銃を構えて『勇敢』とか書かれているがアレも嘘だ(コマンドー
あいつ等が映画でやっていることはヤマカシごっこが大半で、無賃乗車の鬼であった。室内では相撲界で言う「かわいがり」となかなかハートフルな集団である。
その他、いろいろ「アレは嘘だ」という展開が多く、「アレってなんだったんだ?」という謎も多く残るのが気にするな。続編も製作予定らしいぞ。ハンガーゲームやトワイライトに倣って、三部作らしいぞ。

全体的な話をするとハンガーゲームの試合前の訓練パートを長くして生徒同士の殺し合いを無くした感じの映画です。アメリカで400万部売れた小説の実写化らしいのですが、映画内容を見た限りだと日本で言うと「あの有名ラノベが実写化!!」的なノリのような気がします。
とにかく、主人公の「ドーントレス」での生活が長い。そこのパートをもうちょいうまく使って、青春の描写以外にも世界観や他の派閥の生活なんかを描写してくれたら面白かったのに、スポ根漫画みたいな成長段階の描写と「ドーントレス」の面白い訓練。で1時間くらい使ってしまうのは勿体無かった。終盤の物語の始め方も青春パートで楔を打っておけばよかったのに、そうゆうことをしないからフォーが突然落ちていた薬を拾い上げて「この薬を打ち込まれたら操られて意のままに動く兵団の出来上がりだ!あっぶねー」とか言い出すのは無理がありすぎた。無理といえば、精神世界の行動によってその人間の適性が分かるというのもいろいろ無理があった気がする。鳥を追い払うのに火を振りまわすのは「ドーントレス」ぽい選択だと思ったが、『「ドーントレス」は水槽のガラスを割らない』という台詞には「え?」となった。筋力勝負に出るのが「ドーントレス」だと思っていたのだが・・・。各派閥が選ぶ選択ってのも見てみたかったなー。「アブネゲーション」はすべてのトラブルに対処せず死を選ぶぽい気がする。

終盤の展開は望んでいたもので好きです。
見所は主人公やフォーの戦闘ではなく、主人公のおかんの動きです。超機敏に動きアームズの高槻の母親を彷彿させる意外性なのでぜひ見てください。主人公の親父のシュワやスタローンみたいな棒立ちで殴りこみに行くシーンも面白いです。殴りこみ後の親父から「俺は、主人公じゃないからこうなるって分かっていたけど・・・」と今にも言い出しそうな感じが実に良いです。ラスボスの速効性による強制手のひら返しも面白いので、なんというか熟年俳優の演技が良い。主人公とフォーも頑張っていたけど真面目すぎた。
最後のオチは酷いの一言。
ED後にハンガーゲームみたいに「続編製作決定!」とか告知はありませんでした。



完璧にアメリカの10代後半から20代前半向け映画でした。

*1:終盤の展開を見ると街の司法を担っていそうな「キャンダー」はもっと前に出るべきだったきもするが