あの子考えることは変

あらすじ:「グルーヴ先輩」という発狂癖がある巡谷と、その巡谷に変だと思われている同居人日田の物語。


感想:
この作品によって本谷有希子はまた芥川賞候補にあがったが見事に落選した。
俺はその事実を知った時に、落選した事に対する寂しさもあったがその反面、何故か嬉しくもあった。
それはきっと本谷有希子作品が日の目に当たっては台無しになってしまうのではないかという不安からだと思う。本谷有希子が成功して欲しくないのではなく、こんなへんちくりんな(ホメ言葉として)作品はやはりへんちくりんな人達だけがひっそりと購入して盛り上がる姿こそがへんちくりんとして正しい姿ではないか。
まぁ、感想。
タイトルの「あの子」とは日田の事だと思われるが、巡谷も読者からすれば随分変だ。
そんな変な二人が考えて行動して悩んで呪って暴れるだけの話なのだが、最後に日田が「思い出があればこの先孤独でも寂しくない」と叫ぶシーンで感動したというより感心した。俺は人生上一番大事なモノは「経験」だと思っていた。数多くの「経験」を得た人間はどんな苦難にも耐えることが出来、稀に降り注ぐ僥倖を最大限に味わえると考えていた。しかし、もしかしたら「経験」なんてリアルな過去ではなく「思い出」という美化されてしまう過去こそが人を活かす原動力なんじゃなかろうかと。
ともかく。短くてあまり本谷有希子作品としてはドンデン返しもないありきたりな話ですがとても面白かったです。いや、芥川賞とかに選ばれて映画化とかされるときっとヒットしない作品になると思われるので落選してよかった。最高マジで!!

あの子の考えることは変

あの子の考えることは変