狂骨の夢/京極夏彦

あらすじ:さざ波と共に観た事がない景色や会った事がない人物の記憶が蘇る朱美はそのありえない記憶にもがきながら夫の宇田川の帰りを待っていた。それと時を同じくして、巷では海面をぷかぷか浮かぶ黄金色の髑髏が目撃される。朱美を付け狙う復員服の男。神を信じられない牧師に血塗れの神主、首を抱く坊主……。事件は朱美から拡散し、朱美へと収束し始める。



感想(ネタバレ含む):京極シリーズ3作目。ちなみに、俺は一作目の「姑獲鳥の夏」も二作目の「魍魎の匣」は原作を読まずに映画で済ませたので。初の京極シリーズといえます。
レンガ文庫*1の異名を持つ京極シリーズ。とにかく長い。
そして、京極堂の登場が遅い。三分の一を読み終えたくらいで登場して、数十ページで「憑き物落とし」を始めるなんて……。それも本人はほとんど動かずに推理して答えを出すなんて、なんて安楽椅子探偵なんだ。



事件の真相を知ると、ちまたを騒がしている厚生省と保健所を勘違いしたアノ事件ばりに「こんなの事件でもなんでもない」という印象を持った。
俺の推理は、中盤から髑髏を狙う集団の存在は俺も気付いていたが、立川流の集団と神人集団を同じ団体が、意見の違いから別離した元は一つの集団と思っていたから、自分の中で話がこんがらっていたし、朱美(民江)は確実に頭がおかしくなっていて妄想に取り付かれていると切り捨てていた事。でニッチもサッチもいかなくなっていた。
立川流の集団なんて、普通の人間がそこまで推理できるのか? 一柳夫人が朱美だと気付いたのは、怯える民江を異常に勇気付けていた所で予感したけど。朱美が民江だとまでは確信が持てなかったなぁ……。


後は、ストーリーとは関係ない所で、なんで朱美は伊佐間に話した後に、教会で同じ話をしたのか不思議に思っていた。「同じ話なら、『朱美は事の顛末を白丘と降旗に話した』と書けばこの本もっと薄くなるんじゃねーの?」って不思議に思ったけど。読み終えて思えば、伊佐間と教会では話をしていた人間が違うから必要な描写だったのね。そこを筆者のミスと捉えなければ、俺も推理ももっと飛躍出来たのか……。さすが京極夏彦。誰にも解けない問題は用意していない訳か……。



ともかく、コレは叙述トリックなので物凄いセンスの良い監督とCG技術なくして映画化は不可能だろうなぁ……。後エロいし、右翼がうるさそうだし……。


(余談)
次は「鉄鼠の檻」か……。分厚すぎる!!

*1:分厚い新書の為にレンガに見える事から由来